2つの業種を1人の専任技術者がなれますか?

2つの業種について、1人の専任技術者が兼任することができます。

その場合、資格を持っているあるいは申請業種の実務経験があるなどの要件を満たしている必要があります。

パターンとしては、次のものが考えられます。

1.国家資格+10年経験又は所定学科卒業と実務経験

 (例) 電気工事業と電気通信工事業を取得したい場合(両方一般建設業)

  電気工事業については、2級電気工事施行管理技士の資格を持っており、電気通信工事業については、大学で電気工学学科を卒業し電気通信工事に関して、3年以上の実務経験がある

 ⇒ 1人の専任技術者が、電気工事業と電気通信工事業の専任技術者となることができます。

2.2つの業種について、実務経験20年(要件が緩和される場合あり)

 (例) 管工事業と機械器具設置工事業を取得したい場合(一般建設業)

 管工事業と機械器具設置工事業について、それぞれ、10年以上の実務経験がある

  または

 管工事業については、高校を建築学に関する学科を卒業後、管工事について5年以上の実務経験があり、機械器具設置工事に関しては、10年以上の実務経験がある

 ⇒ 1人の専任技術者が、管工事業と機械器具設置工事業の専任技術者となることができます。

3.資格を保有している

 (例) 大工工事業と内装工事業を取得したい場合(一般建設業)

 次に該当する資格をもっていれば、1人で大工工事業と内装工事業の専任技術者となることができます。

 ・建築士(1級又は2級)

 ・1級建築施行管理技士

 ・2級建築施行管理技士(仕上げ)

 また、1つの資格ではなく、それぞれの業種の専任技術者となることができる資格を2つ持っている場合でも、1人で2つ以上の専任技術者となることができます。

 

 

 

 

 

 

指定建設業とは?

指定建設業とは、特定建設業のうち総合的な施工技術を必要とする一定の業種で、次の建設業が指定されています。

1.土木工事業

2.建築工事業

3.電気工事業

4.管工事業

5.鋼構造物工事業

6.舗装工事業

7.造園工事業 

指定建設業を営む場合には、専任技術者の要件が厳しくなっております。

具体的には、次の要件を満たしている者でなければ専任技術者となることができません。

①国家資格者その他の法令の規定による免許で国土交通大臣が定めるものを受けた者

②国土交通大臣が、①と同等以上の能力を有すると認定した者

 

通常の特定建設業の専任技術者の要件では、上記のほかに

・所定の高校卒業+実務経験5年+指導監督的な実務経験2年

・所定の大学卒業+実務経験3年+指導監督的な実務経験2年

・実務経験10年+指導監督的な実務経験2年

・一般建設業の専任技術者となれる資格+指導監督的な実務経験2年

という4つの場合でも、特定建設業の専任技術者となることができますが、指定建設業の場合は、この4つのどれかにあてはまっても、専任技術者となることができません。

 

上記の①と②のうち、実質的には、国家資格に合格した者でないと専任技術者となることができないということになります。

指定建設業の専任技術者となることができる国家資格は次の通りです。

指定建設業 国家資格
土木工事業 一級建設機械施工技士、一級土木施工管理技士、技術士試験建設・総合技術監理(建設)、技術士試験建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理、技術士試験農業「農業土木」・総合技術監理、技術士試験水産「水産土木」・総合技術監理、技術士試験森林「森林土木」・総合技術監理
建築工事業 一級建築施工管理技士、一級建築士
電気工事業 一級電気施工管理技士、技術士試験建設・総合技術監理(建設)、技術士試験建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理、技術士試験電気電子・総合技術監理(電気電子)
管工事業 一級管工事施工管理技士、技術士試験機械「液体工学」又は「熱工学」・総合技術監理、技術士試験上下水道・総合技術監理、技術士試験上下水道(「上水道及び工業用水道」)・総合技術監理、技術士試験衛生工学・総合技術監理、技術士試験衛生工学「水質管理」)・総合技術監理、技術士試験衛生工学(「廃棄物管理」)・総合技術監理
鋼構造物工事業 一級土木施工管理技士、一級建築施工管理技士、一級建築士、技術士試験建設(「鋼構造及びコンクリート」)・総合技術監理
舗装工事業 一級建設機械施工技士、一級土木施工管理技士、技術士試験建設・総合技術監理(建設)、技術士試験建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理
造園工事業 一級造園施工管理技士、技術士試験建設・総合技術監理(建設)、技術士試験建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理、技術士試験森林「林業」・総合技術監理、技術士試験森林「森林土木」・総合技術監理

 

 

なお、一般建設業(下請のみあるいは下請に出す金額の合計が3000万円未満)においては、指定建設業という概念はありません。

 

電気工事業で専任技術者を実務経験で証明する場合の注意点

専任技術者の「実務の経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、ただ単に建設工事の雑務のみの経験年数は含まれませんが、建設工事の発注に当たって設計技術者として設計に従事したり、現場監督技術者として監督に従事した経験、土工及びその見習いに従事した経験等も含めて取り扱うものとされています。


実務の経験の期間は、具体的に建設工事に携わった実務の経験で、当該建設工事に係る経験期間を積み上げ合計して得た期間とされています。

ただし、経験期間が重複しているものにあっては二重に計算しません。

 

専任技術者の要件は、上記のような定義になっていますが、電気工事業の場合には、「電気工事士免状、交付を受けた者等でなければ直接従事できない工事に直接従事した経験については、電気工事士免状の交付を受けた者等として従事した実務の経験に限り経験期間に算入する。」とされていますので、基本的に電気工事士の免許をもったかたの実務経験しか認められないと考えておいたほうがよいかと思われます。

また、消防施設工事についても、消防設備士の免状をもった方がいない場合も工事については、実務経験として認められないので、注意が必要です。

 

 

個人と法人、どっちで許可を取ったほうがよい?

建設業許可を取得するにあたって、個人と法人、どちらで取ったほうがよいかということを判断するポイントは次の通りです。 

①将来的に法人にしようと考えている場合

将来的に法人にしていこうかと考えている場合には、建設業許可を取得にあたって、まず、法人を設立したほうがよいです。

というのは、建設業の許可は個人から法人へ引継ぎができなからです。現在は、株式会社を設立する場合でも株主・取締役1人でできますので、感覚的には個人と変化がないように思われるかと思いますが、個人と法人は別の扱いをしますので、建設業許可を個人から法人へ引き継ぐことはできませんので、将来的に法人にしたいとお考えの場合は、法人を設立してから建設業許可の申請をおこなったほうがよいかと思われます。

もっとも、「法人にしたときには、また、建設業許可を取り直す!」という場合には、まずは、個人で取得するのもよいかと思います。

ただ、建設業許可を取得した際の許可番号は、法人にすると変わりますので、ご注意ください。 

②事業を二代目に引き継ぐことにをお考えの場合

事業を継続して、二代目・三代目に引き継いでいく場合には、①と同じ理由で法人を設立してから、建設業許可を取得されるとよいかと思います。

法人にして、二代目候補を役員とすることで、事業の継続がしやすくなります。これは、役員として5年経過すれば、建設業許可の要件の1つの経営業務管理責任者となることができ、世代交代がしやすくなるからです。

個人事業で許可を取得して、その後、事業主に何かあった場合、二代目に引き継ぐときには、事業主を補佐していたという経験を 証明する必要があり、手続きが非常に煩雑となり、許可を維持できない可能性もあります。

 

以上から、二代目への引継ぎをお考えの場合は、法人を設立してから、建設業許可の申請をされるよよいかと思われます。

上記のほかにも従業員を雇って、事業を大きく展開していくことをお考えの場合にも、取引先・従業員からの信用力・事業の継続という面からも法人で建設業許可を取得されるとよいかと思われます。

 

専任技術者要件を実務経験で証明する場合の添付書類は?

専任技術者の要件を満たしていることを証明するために、実務経験が必要となる場合、特に添付書類は求められていません。

 

経営業務管理責任者の要件を満たしているかどうかを確認する際には、契約書・請求書・請書・発注証明書など各社の状況に応じて、書類を準備する必要がありますが、専任技術者の実務経験を証明する際には特に添付書類は、今のところ、求められていません。

 

ですので、実務経験証明書に担当した工事名や期間を年1件分記載していくだけとなります。

 

経営業務管理責任者と専任技術者が同じ方で、経営業務管理責任者の証明のために準備した契約書等の工事を技術者として担当された場合には、契約書等をもとに、実務経験証明書を記載するとよいかと思われます。

 

専任技術者の実務経験ってどんな経験?

専任技術者の「実務経験」とは、許可を受けようとする建設工事に関する技術上の経験をいいます。

具体的には、建設工事の施工を指揮、監督した経験及び 実際に建設工事の施工に携わった経験などであり、「実務経験」は請負人の立場における経験のみならず、建設工事の注文者側において設計に従事した経験あるいは現場監督技術者としての経験も含まれます。

ただし、工事現場の単なる雑務や事務の仕事に関する経験は含まれません。

 

許可申請の際の、実務経験証明書には、証明が必要な年数(3年又は5年又は10年)を年1件ずつ工事名・工事期間等を記載することとなります。

 

建設業での役員に監査役は含まれない?

建設業の許可申請の際には、法人の役員について記載する用紙があります。例えば、別表や略歴書などがあります。

通常、株式会社の役員といえば、取締役と監査役などを指しますが、建設業においては、監査役は役員とされていません。

ですので、冒頭の別表を作成する際に監査役の記入は不要ですし、役員の略歴書も監査役については、作成不要です。

 

建設業においての役員というのは、取締役、合名会社・合資会社の無限責任社員、合資会社の有限責任社員(業務執行権を与えている場合)、合同会社の有限責任社員、事業協同組合・協同組合の理事をいいます。

監査役、監事、業務執行権を付与されていない合資会社の有限責任社員は、役員ではありません。

※ 合資会社の有限責任社員は、平成18年5月の新会社法施行以降に設立された合資会社の有限責任社員には業務執行権が最初からありますので、役員として認められますが、新会社法施行前に設立された合資会社の有限責任社員は業務執行権がありませんので、役員として認められません。ただし、新会社法が施行された以降に、有限責任社員に業務執行権を付与する手続きをおこなっている合資会社の有限責任社員は、それ以降は、役員として認めれます。

 

学校教育法に基づく学校とは?

学校教育法に基づく学校とは、

幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・大学・高等専門学校・盲学校・聾学校及び養護学校

をいいます。(学校教育法第1条)

この中で、建設業に関係するところとしては、高等学校・中等教育学校・大学・高等専門学校となります。

・高等学校・中等教育学校の卒業の場合には、実務経験が5年以上

・大学・高等専門学校の卒業の場合には、実務経験が3年以上

必要となります。

 

高等職業技術専門校・専門学校・中小企業大学校、防衛大学校・警察大学校・農業大学校などは、専任技術者の要件を満たす学校ではありませんので、ご注意ください。

 

また、単に、卒業するだけではなく、取りたい業種によって、次の所定学科を卒業している必要があります。

     ↓

  所定学科一覧

 

ただし、上記の学科名と違う場合も多いかと思いますが、その場合は、その学科名から判断し、それでも微妙な場合は、成績証明書を取って、要件を満たしていることを確認することになります。

 

事業目的に建設工事の施工が入っていないとダメ?

登記簿謄本の事業目的に、建設工事の請負に関する内容の記載がない場合には、別の書類を用意して確認することになります。

そもそも登記簿謄本の事業目的は、経営業務管理責任者としての経験があるかどうかを見るために許可申請の際に添付を求められています。

実際には、登記簿謄本の事業目的を見ただけでは、建設工事の請負の契約業務についての経験があるとはいえません。事業目的が記載されているだけだからです。会社を設立するときに、将来おこなうかもしれないということで記載していることも多いので、本当のところは、

「事業目的に建設工事の請負工事の記載がある=役員として建設工事の請負の契約業務をおこなっていた」

とはならないのですが、逆に、事業目的に記載があるということは、

「役員として建設工事の請負に関する契約業務をおこなっていただろう」

ということで、第1段階としては、経験があることを推定するということで事業目的の記載を登記簿謄本で確認することになっています。

 

第2段階として、5年あるいは7年分の契約書や請求書・請書・発注証明書などを各社の書類の状況に応じて、証明したい年数(5年又は7年)分、年1件ずつ用意することになります。

 

この2つの書類によって、経営業務管理責任者としての要件を満たすことを証明することになります。

 

しかし、登記簿謄本の事業目的に「建設工事の施工請負」などの記載がない場合は、第1段階で経営業務管理責任者としての要件を満たしているかどうかを推定できませんので、第2段階で用意する契約書等を証明したい年数(5年又は7年)分準備して、「事業目的に記載はないけど、確かに建設工事の請負をおこなっている」ということを証明することになります。

準備する書類は、1年に4~5枚(3ヶ月に1枚)ぐらいの契約書等が必要となります。

ですので、証明したい年数が5年の場合には、準備する契約書等は、1年に4~5枚ですので、5年で20~25枚用意する必要があります。

 

また、登記簿謄本の事業目的に建設工事の施行に関する請負の記載がない場合で、許可申請の際に2業種申請するときには、1つの業種で7年分の契約書等の書類を集めたほうが少なくすみます。

 

この書類の準備が一番大変かと思いますので、普段から書類の管理はしっかりしておくと準備しやすいかと思います。